Share

一番てっぺんに! 2

last update publish date: 2025-10-24 20:44:30

「外の世界は危険だ、お前が行ってもすぐに怪物の餌食になってしまうだろう」

 組んでいた腕を崩してタカクは続けて言う。

「しかし、あの裏の塔の最上階にまで行けるぐらい力を身につけたらこの結界を解いて外の世界へと行かせてやろう」

 その言葉を聞いた日からムツヤは塔の最上階を目指す日々が始まった。

 物心が付く前から塔の60階までは冒険をしていたムツヤだったが、そこから先の階段には『触手だらけのキモいし臭いしデカイトカゲ』が居る。

 近付きたくなかったので、いつもそこまで行って帰ってを繰り返していた。

 それでも塔は毎回入る度に使い道も名前も知らないけど、面白そうな物がたくさん落ちている。

 そして、それを試して遊ぶモンスターも充分に居たので、遊ぶだけだったら退屈はしなかった。

 ムツヤは塔の外まで来るとカバンから鎧を取り出す。

 走る時に邪魔になるので装備はこの便利な肩掛けのカバンにしまってある。

 だが、カバンは剣を入れるには少し小さいように見えた。

 中身が入っていたとしても全然膨らみが無かったのだが、カバンから取り出されたムツヤの手にはしっかりと鎧が握られている。

 仕掛けは簡単で、このカバンは念じながら手を突っ込むと入れておいた物をすぐに取り出せるのだ。

 更にいくらでも入るし、食べ物や薬を入れても腐らないのでムツヤの大切な宝物だった。

 まぁ、宝物と言ってもこのカバンは年に1度ぐらいは落ちているので家には10個以上予備はあるのだが。

 その予備はただ家に置いても仕方がないので、1つはタカクが体調を崩した時にと薬をたくさん入れたカバンを作ってある。

 他には多くとった魚やモンスターの肉、食べきれなかった食事も入れておく食料の備蓄用に家に1つと。

 もう1つはカバンの口を広げられたままトイレの底に置かれている。こうすると臭わない上に虫も沸かず、肥溜めに持っていく時も楽なのだ。

 後はゴミ箱に2つ使い、残りは特に使い道が思い浮かばなかったので家のタンスに入れてある。

 このカバンは使い道によっては無限の可能性があるはずだった。

 商人であれば、自分の身と馬一頭あれば無数のキャラバン隊を連れる事が出来るようなものだ。

 ありとあらゆる物を入れて移動し、売って莫大な富を生み出す事が可能だろう。

 戦争で使うのならば、余剰の武器をしまい込み、軍隊の移動中の負担を減らせる上に、腐らずに調理済みの食事がいつでも取り出せる夢のような武器庫兼兵糧庫にもなる。

 そんな、夢のような道具がご家庭の救急箱と貯蔵庫。

 それならまだマシだが、トイレにも使われている事を商人や軍師達が知ったらと思うといたたまれない。

 このカバンの存在を知ったら彼らどころか世界中の人間が喉から手が出るぐらいに欲しがるだろう。

 そんなカバン自体が値千金であるというのに、収集癖と貧乏性を兼ね備えたムツヤは基本的に塔で拾ったものは全部このカバンの中にしまっていた。

 取れた腕がくっつく薬から、何に使うのか分からない道具まで全てだ。悪知恵の働くものがこのカバンを手にしたらと思うと恐ろしい。

 話は戻り、ムツヤは裏ダンジョンである塔の扉を開けて中に入る。まず出迎えて来るのは『でっかいサワガニ』みたいなモンスターだ。

 こいつはムツヤが5歳の時から戦っているのでもはや敵というより親しみのあるおもちゃのような扱いだ。

 一度、飼ってみようと思い、家に連れて帰ってみたが、餌をやろうが撫でてやろうが襲いかかってくるので、諦めて手刀で粉砕した。

 その際にムツヤは加減を誤って部屋中にかにみそを飛び散らせ、タカクに酷く怒られたのを覚えている。

 ムツヤは剣を構え、目にも留まらぬ速度でカニを一刀両断する、カニの断面からは業火が吹き出した。

 塔の中程ぐらいまでは、触っても毒のないモンスターであれば篭手を付けた手で殴るか、足で蹴るだけで充分なはずなのだが。

 ムツヤは最近手に入れた『斬ると炎が出てくる剣』が面白くて気に入っており、ずっと使っていた。

 次々と襲いかかってくる『紫でぷるぷるした水』みたいな奴や『デカイ蝶々』『でっかい蛇』をムツヤは殴り飛ばし、蹴り飛ばし、剣で真っ二つにして燃やし、何度も階段を駆け上がる。

 そんな中、ガラスの小瓶に入った青い液体が転がっていたので拾い上げてムツヤは中身を飲み干した。

 詳しいことは知らないが、甘みがあり、味がよく、落ちている薬の中では喉が乾いた時に一番ピッタリなのでムツヤはよく愛飲している。

 これがありとあらゆる病気を治す幻の秘薬で、一本で豪邸が一軒買える代物だということをムツヤが知るのはだいぶ先の話だった。

 階層を数えながら登ると1時間もしない内に例の『触手だらけのキモいし臭いしデカイトカゲ』の下層である59階まで来る。

 アイツは近づくと吐気がするほど臭いし、触手で触られると、肌が物凄く痒くなるので今まで関わらないようにしてきた。

 だが、今日こそはアイツを倒すぞとムツヤは気合を入れて階段を登る。

 接近戦で倒せる自信はあったが、出来れば近付きたくないのでムツヤはその階の入り口に隠れて、カバンから弓と矢を取り出した。

 塔の最上階にまで行けたら外の世界へと行っても良いと言われてからずっとこの為に練習をしてきたのだ。

 ムツヤは昔から直接殴りに行ったほうが早いと弓と矢にはあまり興味が無かったので弓の扱いは初心者だった。

 だが、ここ二週間で『命中するとメッチャ光ってモンスターがパパウワーってなる弓』を練習してきたので、ムツヤにはあの触手トカゲを仕留める自信がある。

 最悪、我慢して剣で斬ればいいしと楽観的だ。

 しかし、何度か臭いで吐いてしまうだろうから出来ればやりたくは無かったが。

 片目を閉じて弓を引き絞ると、ムツヤは左手を離す。

 放たれた矢は触手トカゲの顔に当たり、例の光がパパウワーと現れ、触手トカゲは部屋中にビリビリと響き渡る咆哮を出してのたうち回った。

 その間もムツヤは素早く弓に矢をつがえ直し第2射、3射と矢を浴びせ続ける。

 命中した矢の光が消えると、そこを中心に半径40cmほどのグロテスクなクレーターを触手トカゲの体に作る。

 怒った触手トカゲは緑の毒液を放射状にばら撒いて階段の入り口の後ろに隠れていたムツヤへと降らせた。

 流石に毒液を浴びたくないとムツヤが飛び出すと、待っていたとばかりにトカゲは伸ばした触手を鞭のようにしならせて襲いだす。

 それでも、足の早くなる魔法を使い、部屋を縦横無尽に駆け巡るムツヤを捉えることは出来なかった。

 その間も絶え間なく矢の雨が降る。

 触手トカゲの発する咆哮も段々と弱くなり始め、天を見上げて一度だけ一際大きく咆哮を上げると、それを最後にその巨体は煙とともに消え去ってしまった。

 今までのムツヤの経験上、モンスターの中には死ぬと死体が残るやつと煙になって消えるやつの二種類が居る。

 死体が残るやつは食べると大体は美味いので食料になっていた。

 触手トカゲを初めて倒した達成感などは微塵も感じず、ムツヤはアイツは煙になるタイプだったのかとちょっと関心を持っただけだ。

 まぁ、肉が残ったとしてもあんなに臭いモンスターは食べる気がしないのでどうでもいいのだが。

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • 裏庭が裏ダンジョンでした   修行生活 1

     エルフの村へしばらく滞在させてもらうことを村長と宿屋の主に報告すると、快く受け入れてくれた。 早速アシノとルーの指導の元で特訓が始まる。「まずは自分自身が強くなることが第一だ。その後に仲間同士での連携を取る練習をする」「はい!」「基礎体力づくりと言ったら相場は決まっている」 皆は動きやすい格好に着替えて村外れに集合していた。「走るぞ!」「ちょ、ちょーっと待ったアシノ! なんで私まで走るの!?」 ルーはここまで着いてきて待ったをかける。「ルー、お前も研究だーって言って運動不足だろう?」「いや、確かにそうかもしれないけど!」「研究はギルスに任せておけ、苦楽は共にしよう。私達、仲間だろう?」 アシノが笑顔で言うとルーはガタガタと震えていた。 走り込みをすると、案の定最初に音を上げたのはルーだ。「もうらめぇ…… 死んじゃう……」「お前なぁ……、最近まで寝たきりだったユモトでさえまだ頑張ってるんだぞ!」 ユモトも苦しかったがハァハァ言いながら走っている。「だって疲れるし胸も痛いんだもん、アシノと違って大きいんだもん!! 邪魔なのよ!!」 瞬間、アシノの何かが切れる音がした気がして、皆はピューッと走って逃げていった。「え、アシノ? ちょっ、ワインボトルは駄目、ワインボトルは駄目だって!! ちょっと皆!? ヘルプミー!!!」「ずびまぜんでじだ!!」 泣きながらルーはアシノに謝っていた。その間も皆は走り続ける。 ムツヤは汗の1つも流さずに先頭を走り、次にヨーリィも表情1つ変えずに走っていた。 この2人は走り込みをする意味があるのかと疑問に思うモモとユモトだったが、それぞれ精一杯ムツヤに着いて行く。 モモは体力があるので余裕があったが、ユモトは遅れ気味だった。その後を涙と鼻水を垂らしながらルーが走っている。「よーし、走り込みはここまで」 そろそろ良いだろうという頃合いでアシノが号令をかける。 助かったーとルーは倒れ込んでハァハァ言っていた。「次は武器の素振りだ」 それを聞いてまた絶望した表情になるルー。プルプル震える足で逃げようとするがアシノに襟首を掴まれてしまう。「私は召喚術師だから!! 素振りとか無いから!!」「敵が接近してきたとっさの時に必要だろう? 師匠から習わなかったのか?」 アシノの笑顔にひいぃと悲鳴を上

  • 裏庭が裏ダンジョンでした   40日間 2

    「私達の仲間、リースが戦死しました。その遺体をこの村の墓地に葬って頂きたいのですが」 モモの言葉を聞いて村長は悲しそうな表情をして言う。「なんと…… お悔やみを申し上げます。勇者様の御一行でしたら村を上げて盛大に弔わせて頂きます」 このまま黙っていればリースは自分たちの仲間として丁寧に供養されるだろうが、モモは言いにくいことを言わずにはいられなかった。「リースは…… リースは、元キエーウのメンバーでした」 それを聞いた村長は目を丸くする。「キエーウの……? それはどういった事でしょうか?」「リースは亜人…… オークに両親を殺された恨みからキエーウに入りました。しかし、和解することができ、共に人間と亜人が生きる未来のために生きると誓ってくれたのです」 続けてモモは話し続けた。「今回のキエーウの支部を壊滅できたのも、リースの案内があってこそでした。短い間でしたがリースは仲間でした、どうかお願いします」 モモが頭を下げると重い空気が場を支配する。誰もが村長の言葉を待っていた。「そういう事でしたら、わかりました」 思わず頭を上げてモモは村長を見る。「リースさんはこの村で永久にご供養させて頂きます」「ありがとうございます!」 モモは思わず目から涙が溢れていた。 アシノが治安維持部隊から帰還するとムツヤ達と合流した。リースの件を告げると「そうか」と短く返す。 今日はまたカノイの宿にお世話になり、明日リースの葬儀を行うことになった。 そして、アシノの話によると、治安維持部隊は今からキエーウの支部である枯れたダンジョンへ向かうらしい。「とりあえず、今日は皆休むぞ」 焦りを隠しきれないアシノはそれだけ言って風呂へ行ってしまった。「ごめんね。多分サズァン様の言っていたことでアシノはカリカリしてるみたい」 だがそれは皆同じであった。ムツヤは自分の道具のせいで亜人が危ないことに悩んでいるし、当事者のモモも気が気でない。 それぞれが考え事をして、うまく眠れない夜を過ごした。 エルフの生と死というものへの考え方は、大雑把に説明すると、自然から生まれた命がまた自然へと帰るといったものだ。 墓地には新たな穴が掘られ、その隣にリースは厚い布に包まれて眠っていた。 棺桶は存在せず、代わりに村中のエルフが土の中へ入れられたリースを埋め尽くす花を散りば

  • 裏庭が裏ダンジョンでした   40日間 1

    「アシノさん、終わりました」 連絡石でムツヤはアシノへそう伝えた。「そうか、ご苦労だったな。治安維持部隊が来る前に裏の道具の回収と、キエーウの隊員を縄で縛っておいてくれ」「はい」 ムツヤは最初に言われた通り裏の道具を回収し、戦闘員達を縄で縛る。「お……い、裏の住人」 最深部に居た男が何かを話し始めた。「亜人は……、どちらにしろ後40日で終わりなんだよ、ハハッハハハハ!!!!」「おい、何を言うんだ!!」 それだけ言って男はまた何も話さなくなる。――――――――――――――― モモが倒した鎌を使う男は森の中へ埋葬した。憎い敵であったが、彼もまた悲しみを背負って戦っていたのだろうから。「モモ、リースの出身地は知っているか?」「いいえ……」 リースの亡骸は布で包んでおいた。顔だけ見れば眠っているようだ。「出来れば故郷の地で眠らせてやりたいが…… 仕方がない。エルフの村で引き取ってもらえないか聞いてみよう」「エルフが嫌な顔をするのでは無いでしょうか、リースはキエーウのメンバーでしたし……」 モモは心配から思わずそう言ってしまったが、アシノは訂正してやる。「違うな、リースは私達の仲間だ」 ハッとしてモモは頷く。短い間だったが、確かにリースは仲間だった。「えぇ、そうでした……」「何にせよムツヤと合流したらエルフの村へ向かうぞ。治安維持部隊にも待機してもらっている」「そんな、リースさんが……」 仲間の元へ戻ったムツヤはリースの死を告げられ、ショックで固まってしまった。「やっぱり、やっぱり俺のせいです!! 俺が裏の道具を持ってきたからっ!!」「ムツヤ、お前のせいじゃない。キエーウという存在はこちらの世界の元からある問題だった」「そうです、ムツヤ殿が悪いわけではありません!!」 アシノとモモはムツヤにそう言うほか無い。 馬車にリースを乗せて皆でエルフの村へと戻ることにした。皆、心身ともに疲れ果て、会話は無い。 そんな時に、ムツヤのペンダントが紫色の光を放った。久しぶりのサズァンの登場だった。「ムツヤ、まずはお疲れ様ね」 いつもの掴みどころのない感じは消えて、サズァンは神妙な面持ちをしている。「サズァン様!?」「ムツヤ、皆、落ち着いて聞いて欲しいわ。恐らくキエーウは『災厄の壺』を発動させたみたいよ」 それを聞いてム

  • 裏庭が裏ダンジョンでした   キエーウ強襲戦 4

     男は最後に走馬灯を見た、自分を1人で育ててくれた母親。大好きな母親。オークに殺された母親だ。 ある日、治安維持部隊が来て、自分の母親はオークの盗賊団に殺されたと知った。 夜遅く、街の仕事からの帰り道で母親は殺された。悔しくて、寂しくて。 それが、何故だか分からないが、自分は母親に抱きしめられていた。温かい安心する体温が伝わった。「お母さん!!」 安心して泣いてしまっていた。母は頭を優しく撫でてくれる。「寂しい思いをさせてごめんね、ごめんね……」「ムツヤか? こっちは片付いた。すまないがもう一度キエーウの支部へ向かってくれ」 アシノは連絡石でムツヤに話した。「わがりまじだ」と返事があったので任せて問題は無いだろう。 ルーが探知盤で辺りの様子を見たが、反応はない。敵もこれ以上は居ないようだった。 モモは体中の傷も足首も回復薬で元通りになった。そして治ると同時に走ってリースの元へと向かう。 待っているのは残酷な現実だ。リースは下半身と上半身が斜めに切り分けられ、目は見開いたまま死んでいた。 その惨さにユモトは思わずまた口元を抑える。 モモは半ば無意識に2つになったリースを元に戻し回復薬を掛けようとした。「やめろっ!! 回復薬の無駄遣いだ!!!」 黙っていたアシノに一喝されてモモはビクリとする。「あ、アシノ…… そんなふうに言わなくても」 ルーは喋ったが、うまく言葉が見つからずまた黙り込んでしまう。「死んだ人間は生き返らないんだ。たとえ裏の道具を使ったとしてもっ!!!」「あっ、あっ、うぅぅぅ……」 モモは膝から崩れ落ちて泣いていた。悲しさか、悔しさか、虚しさか、それともそれら全てが混ざった感情か。涙が溢れて止まらなかった。 ムツヤはキエーウの支部を目指し風のように走っている。先程の爆風で辺りの木々は倒れ、燃えていた。 心臓がバクバクと鼓動を打っているのが分かる。人を殺めた恐怖が体を支配しそうなのが分かる。 頭を振ってそれらから逃れようとした。今は戦いに集中をしなくてはならない。 探知スキルで近付いているのは分かっていた。あと数分ほどでたどり着くだろう。「敵襲ー!!!」 キエーウの支部である枯れたダンジョンでは蜂の巣をつついたような騒ぎだった。 弓兵と魔道士が外へ出てムツヤの強襲へ備える。 森から何かが空へ飛び出した

  • 裏庭が裏ダンジョンでした   キエーウ強襲戦 3

     おびただしい血と共にリースの上半身が崩れ落ちて地面に落ちる。「リイイイイイィィィース!!!!!!!」 モモが叫んで近付く、そして回復薬を上半身に振りかけた。 リースは叫ぶことも動くことも無かった。目を開いたまま、何が起こったか分からないまま、絶命していた。「貴様あああああああ!!!!!」 モモは声にならない叫びを上げてその人影の方を見る。 ユモトはその凄惨さに思わず胃液がこみ上げて口に手を当てた。「裏切り者には、まず死んでもらうじゃんな」 男の声だった。ビュンビュンと大鎌を振り回し、血を払うと構え直した。「俺が憎いか? 亜人。憎しみの連鎖を断ち切るなんて無理じゃんな。こうして簡単に憎しみなんて生まれちまう」「人を殺しておいて何を言う!!」 涙を堪えながら剣先で男を捉えてモモは怒る。「それはお前も一緒じゃんよ。お前は俺の友人を殺した」 それを言われてモモはハッとした。「お前が斬った人間を忘れたか? 何でも切れる剣とデカくなる盾を持つ男じゃんよ」「モモ、話を聞くな!! 戦いに集中しろ!!」「キエーウの人間はほぼ皆、亜人に恨みがあるじゃんな。これは亜人をこの世から消すまで消えないわけ」 モモは思い出してしまう。始めて命を奪った男のことを。 出遅れた、男が鎌を持ち、こちらへ走ってくる。そこへ投げられたのは木の杭だった。 騒ぎを察知して走ってきたヨーリィが男の前に立ちはだかる。「例の死体少女のお出ましってわけか」 ヨーリィが木の杭をビュンビュンと投げるが、男は大鎌を振り回して弾き飛ばす。「ユモト!! ボーッとするな!!」 アシノに言われてハッと我に返り雷の魔法を詠唱した。鉄の武器を持つ者は雷の魔法を武器で弾く事も出来ず、躱すか防御壁を貼るかしか防御の手段がない。「遅いじゃんな」 男は大鎌を持っているとは思えない速さで右へと走り、雷を避ける。アシノもワインコルクをパァンと飛ばすが当たらない。 そんな男をモモは剣を持ち追いかけた。まずいとアシノは思う。「モモ、無理をするな!! そいつは今のお前じゃ歯が立たない!! ルーの加勢を待つんだ!!」 くっと足を止めて仲間の元へ戻るモモ。「逃げるのか? 弔い合戦といこうじゃんよ」 男へ怒りはあったが、理性の方が上回っていた様だ。 煽りも無視して距離を取って剣を構える。そんな中

  • 裏庭が裏ダンジョンでした   キエーウ強襲戦 2

     しかし、敵もムツヤをまだまだ甘く見ていたようだ。 人間離れした速さで飛び回り豪火を辺りに散らすムツヤを見て「本当に勝てるのか?」といった不安が少しずつ生まれる。「くそっ、なんて奴なの!!」 女召喚術師は次々と砂粒を依代に精霊を呼び続けた。流石に仮面越しの額に汗もかいてくる。「クソックソッ、止まりやがれ!!」 触手でムツヤを捉えようとする男も苦戦をしていた。「やっぱ、一筋縄じゃいかねぇってワケか……」 ムツヤに何らかの方法でトドメを刺そうとしている半円状の刀を持つ男は、しびれを切らし初めていたが、どうすることも出来ないでいた。 そんな何もかもが異次元で無茶苦茶な戦いが5分ほど続いた時、やっと進展があった。ムツヤが地面に着地し、何故か動かなくなったのだ。「しめたっ!!」 そのスキを逃さずに、触手でムツヤの足、そして次に手を拘束する。ムツヤは抵抗の1つもしない。「よっしゃ、後はあいつの首を吹き飛ばすだけだ!!」 ずっと長い刀を握りタイミングを図っていた男は一気に魔力を込めてムツヤ目掛けて弾けるように飛んだ。その姿は青い閃光に見える。 この刀は魔力を込めると、雷が走りありとあらゆる障害物を破壊しながら使用者と共に一直線に飛んでいく裏の道具だ。 ただ、例によって熟練の戦士であるこの男でさえ魔力不足かつ、完璧に使いこなせてはいないので、使用は1度きりだ。2度目は無い。 木をなぎ倒しながらムツヤに近付く閃光。 ムツヤはそれを知ってか知らずか触手に縛られ、小さい精霊が全身にまとわり付いて小さい山のようになっている。「死ねぇ!! 亜人の味方が!!!」 瞬間、小さい精霊の山から光が漏れた。そして起こるのは…… 大爆発だった。 閃光になってムツヤに近付いた男はそれを間近で受けてしまい、吹き飛ばされる。 激しく体を木に打ち付け、手足が吹き飛び、全身の骨が砕け、絶命した。 遺骸は爆発

  • 裏庭が裏ダンジョンでした   イタガ攻防戦 3

    「……、どういう事よ」 ルーはジト目でアシノを見つめた。「ここを私達の拠点にして彼奴等を迎え撃つんだよ」「この様な場所で良いのでしょうか?」 ユモトも不安そうに尋ねた。アシノは一体何を考えているのだろうと。「こんな場所だから良いんだよ、ここは街が近いからどこから攻められてもすぐに駆けつけられる」「それなら街の中に居れば良いじゃない!!」 ルーがもっともらしい意見を言うが、アシノは首を振る。「ぶっちゃけた話、あの魔人に抵抗できるのはムツヤぐらいしか居ない。だが、ムツヤは正体を隠さなくてはいけない」「そんな事知ってるわよ」「だからムツヤには正体不明の冒険者になって貰わなくちゃ

  • 裏庭が裏ダンジョンでした   オークの救世主になろう 1

     藁にでもすがりたい思いのモモは目の前の男を信じてみることにした。 妹も仲間もどの道、何らかの手を施さなければ死んでしまうかもしれない。「信じるな! そいつは嘘を付いている! そんな薬が存在しているはずがない!」 声のする方をモモとムツヤは同時に見た。 茂みに殴り飛ばされたオークの一人が顔を抑えながら立ち上がり、モモに警告を入れる。「バラ…… しかしもう何も手が……」 バラと呼ばれたオークの男は脳震盪から回復し、その間は体が動かせなかったが、数分前からぼんやりとした意識はあった。 そして、二人のやり取りを聞いていて思った。自分は一瞬で治せるが他人は治せない魔法

  • 裏庭が裏ダンジョンでした   一番てっぺんに! 3

     ムツヤは『割ると辺りのクサイ匂いが消える青い玉』を触手トカゲの消えた場所に投げる。 これは割れた場所を中心として、約半径30メートルの空間に漂うどんな有害物質でも除去できる代物なのだが、普段は使い道が見つからないのでトイレのちり紙の横に山積みにされていた。 大きい方をした後のエチケットだ。 もちろん、これも外の世界で1玉売れば1週間は酒場で豪遊が出来る価値がある。 部屋は快晴の空の下で心地の良い風が吹いたように、爽やかな空気になった。 さっきまでの匂いを嗅いでいたムツヤは普段より余計に清々しく感じている。 ムツヤは知らない事が多い。 触手トカゲの吐き気を催す臭いは、常人であれ

  • 裏庭が裏ダンジョンでした   一番てっぺんに! 1

     ムツヤ・バックカントリーは今、外の世界に出て来て早々パンツ一丁にされてしまった。 月明かりに照らされるムツヤ少年の前にはオークが3人。その内1人は人間の美的感覚で見ると美人だ。 拾った本で外の世界の事を勉強していたムツヤは最悪の展開に気付いてしまい、一瞬で血の気が引いてしまう。「あ、あの、オーグさん、ひとつぅー…… いいですか?」「なんだ」 ムツヤは今にも泣きそうな、震えた声でオークへと質問をする。「ご、これから私は、あのー、いわゆる『っく、殺せ』って奴んなるんでしょうか? お、おれ、外の世界で女の子とは、ハーレムしだかったのに、お、オーグに」「何を気持ち悪いことを言っている

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status